検診にひっかかったら『がん!』の間違い
難波美智代です。
先月21日、東京23区ではじめて、豊島区がHPV検査を導入しました。
(※30歳、36歳、40歳の女性が対象です)
『HPV検査』とは、ヒトパピローマウィルス(HPV)のなかでも、大部分の子宮頸がんの原因となる数種類の「ウィルスに感染しているかどうか」を調べる検査です。
いま一般的に行われている子宮がん(子宮頸がん)検診は、『細胞診』といって、HPV感染した細胞が「がんに進行していく途中の細胞異変をおこしているか」どうかを調べる検査です。
たまに「娘が子宮がん検診にひっかかってしまいました。どうしたらよいのでしょうか?」というご質問をいただくことがあります。この場合
検査結果が陽性=子宮頸がんである
と、勘違いされているケースが多く、まだ状況がはっきりしていないので安心してほしいこと、そしてかならず、その後の精密検査(組織診)をうけることを伝えます。さらに、むやみにネットの情報を調べて不安を募らせるのではなく、わからないことを整理してかかりつけのドクターに聞いてみることを薦めます(一般的な内容であれば、電話で教えてくださる場合もあります!)。
女性の約80%が一度は感染しているといわれるヒトパピローマウィルス(HPV)は、約90%が免疫力などで自然に消滅していくものの、感染自体はなんども繰り返されることが特徴です。ウィルスに感染していも『がん』というわけではなく、感染から5年~10年かけてがん細胞に進行していくので、細胞が異変をおこしていても自然に治ることもあり『がん』ではないのです。
ですので、どちらの検査が陽性でも「がんである」ということではないのです。
・・分かりにくいですね(笑)!
HPV検査が陰性(ウィルスに感染していない)であれば、その先約5年は『子宮頸がん』になる可能性が極めて低い。ということがわかるのです。実際、米国では、30~65歳の女性に対して検診間隔を延ばしたい人は細胞診 と HPV検査の併用をする5年間隔の検診を推奨しています。
ただ、30歳未満については、HPVに感染している割合が高く(約半数といわれています)そのほとんどが一過性のものである場合が多いので、細胞の異変がおこった時点で発見できる細胞診で充分だとされています。
参考:子宮頸がん検診公聴会-HPV検査導入」の疑問解決のための記者会見 | 子宮頸がん征圧をめざす専門家会議より改変。
日本では、2011年に産婦人科医会より、細胞診とHPV検査を併用して受診するのであれば、3年に一度の受診で問題ないという発表がありました。
すでに島根県や栃木県では、官民学一体となり子宮頸がん予防に効果のある方法なのか、経済的な効果があるものなのかを調査報告しています。それにより、厚労省も昨年から「HPV検査」の利益・不利益を総合的に調べる国家プロジェクトである「子宮頸がん検診における細胞診とHPV検査併用の有用性に関する研究」(参加全国34市町村)を立ち上げています。
子宮頸がん検診における細胞診とHPV検査併用の有用性に関する研究より
なぜこのような流れがあるか・・というと
検診にはお金と時間と手間がかかるからです。
これは、受診する個人はもちろん、検診に従事する産婦人科医も細胞検査技師も、費用を助成する国も自治体も・・ということです(正確には、国民の税金により負担されているわけですが!)。
ワタシたちは病気になれば、病院で治してもらえる。と、へんてこな信頼を医療者に寄せているところがあって、病気を予防することや、病院のかかりかたに対しての知識が深くありません。それによって、医療者が過剰な長時間労働を強いられていたり、救急医療にひとが溢れかえって、しかるべき処置がとどかなかったりで、なんだかバランスの悪い状況になっていることも事実です。
病気になったときのリスクや医療費、労働損出を試算したうえで、個人、医療現場、財政などすべてのベネフィットを加味すると
◎ 精度の高い検診によって
◎ 効果的に、未然に病気を防ぎ
◎ 心身、経済ともに不安と負担を軽減すること
が必要になります。
先進諸外国でも最低レベルの検診受診率であることは、先のブログ『24.5%!検診に行かない日本の女性 - 難波美智代の女性からだ会議』でお伝えしたとおり、まずは検診にいかなくては話にならないのですが、ワタシたちは、ただ検診に行けばよい!ということではなく、なぜ、検診にいく必要があるのかを考えて、病院のかかり方を知ってみるのことも大切なのですね!
検診に行きやすい環境づくりと、関わるすべての人に不安と負担の少ない医療が実現することを願います。
w/luv!mie
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難波美智代が代表をつとめるシンクパールは、「婦人科系疾患の予防啓発」を目的に設立された一般社団法人です。女性たちが「検診にいきやすい環境づくり」を、このブログとFacebookページを通じて考えていきたいと思います。活動にご賛同いただける方はぜひいいね!をお願いします。